私たち日本人は、誰でも義務教育の中で英語を勉強します。ですから、どんな人でも「水」が英語でWaterであることくらいは知っています。それがヨーロッパの国だったりすると、観光地であってもWaterが通じないことがある、Waterといっても、水が買えないのです!
イタリア語Acqua(アクア)やドイツ語のWasser(ヴァッサー)だと通じるのに…なんで?と思うのが多くの日本人です。ほとんどの日本人にとって義務教育で学ぶ外国語が英語であることから、「英語は世界中で通じる共通言語」だという思い込みがあります。確かに英語は、特にビジネスにおいて、最大のコミュニケーション言語ですが、世界中どこにおいても、万能というわけではないのです。
「英語」の罠
日本人は自分が「学校で学んだ英語が正しい英語である」と思っていますよね。アメリカとイギリスでは使う単語や言い回しが違うことがあるということは、知っている人も多いでしょう。でも、実はそれ以上に、使われている国、使っている人が属している社会(階級、年代、そして時代)によっても、いろいろと違うのです。
もう少し詳しく説明しましょう。
「使われている国によって違う」のは想像しやすいですよね。オーストラリアはイギリス英語だけれど発音が違う。同じイギリス英語でも、アジアの国シンガポールはシンググリッシュ、インドはヒングリッシュと呼ばれるくらい独特です。アメリカとカナダでも実は結構違う。
そのため私たちはライターが書いた文章を校正に回すとき、注意が必要です。イギリス人ライターが書いたものをアメリカ人校正者が修正し、それを見たオーストラリア人編集者がさらに修正する。ここで「この記事を読むのは○○の人達です」ということをちゃんと定義して伝えておかないと、3人で喧嘩が始まるなんてことになりかねません。
また、「使っている人が属している社会」、これによっても英語は大きく違います。単語の違いという単純なものだけでなく、構文自体が違う場合もあります。クラスによっては古典的な言い回しが残っている場合がありますし、一方で労働者の人達が多いエリアでは、例えばロンドンの下町言葉であるコックニーのように、自分たちの属する社会にプライドを持って独特の言葉を使う人たちもいます。
言葉は生き物です。日本でも、以前は「ヤバイ」はネガティブな言葉でしたが、今では最上級の褒め言葉として使われますよね。英語は世界中の多くの地域や違った人たちに使われているうちに、どんどん変化しているという側面もあります。
余談ですが…
“Lady Godiva” とは一体何を指すかご存じでしょうか。Lady Gagaの話か、さてはチョコレートのGodivaかと思わず首をかしげてしまうのですが…
その答えはなんと5ポンド。英語でのFiverが基になっていて、韻を踏んでいるらしい。コックニーの言語やばすぎ!
正しい英語とは
私たちが英語の制作物を作るとき、時々、困ったことがあります。ネイティブの英文ライターが書いた原稿に、クライアントが「この英語は間違いだらけです。この文章はこう書くのが正しい」と修正が入ることがあるからです。日本の学校で英語をきちんと学ばれた方であるほど、こうしたことが多くあります。
ネイティブは、あえて倒置法を使ったり、単語を省略したり、言葉遊びをしたり、時には話し言葉にはない公式な文書の構文を使ったりしながら、目的に合った、また読み手の心に届く文章を書いています。日本語でもそうですよね。日本語の教科書通りの文章だけで、雑誌や小説が構成されているわけではありませんから。
それに私たちが学校で学んだ教科書に載っている英語は、実はちょっとオールドファッションだったりもしているのですよ。(言語学者によって教科書が書かれ、文科省の検定に通って配布されるまでにとても時間が掛かっていますから!)
余談ですが…
日本情報フリーマガジンWAttention誌やWAttention WEBでは、他言語の媒体に記事を転載する際に、現地スタッフに表現や見せ方で気になるところはないか確認してもらうようにしています。当たり前のことですが、本当にその記事が読み手に届いているかを考えたときに決して疎かにしてはいけないなと思うのです。
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